FC2ブログ
2018/10/07

冬虫夏草の消失について考える

ハスノミクモタケという冬虫夏草がある。大きさ2cm弱の非常に小さな冬虫夏草だが、その中にこんなに細かな蓮の実のような子実体が出ているのが非常に面白い。

この冬虫夏草は県内某所ではかつて無作為に葉っぱをめくれば必ず見つかるほど豊富であった。しかし、現在は1シーズンに3個体見つかれば良い方である。もっと正確にいうとアナモルフばかりになってしまったという方が正確だけど。原因は公園整備に伴う間伐で、環境が変わってしまったからだろうと思う。
僕は普段採取した冬虫夏草に対して発生環境の温度と湿度を記録している。このデータをもとに同じ生育状態のハスノミクモタケを追培養してみた。結果は写真の通り。以前ハスノミクモタケの追培養を成功させた温度条件かつ、近年の湿度条件で追培養すると、予想通りアナモルフが発生した。

あくまでも屋内での条件なので、証明とまではいかないものの少なくともハスノミクモタケの発生条件に湿度が大きく関わっていることは間違いないのではないだろうか。ここでは明言はしないが、大体の湿度の境目も分かった。
自分が毎年楽しみにしている種類が消失していくのは確かに悲しい。でも発生しなくなっている事実は、逆に冬虫夏草がどんな環境を好むのかを教えてくれている。そう考えると探求の幅は広がるし、誰かにこの小さな冬虫夏草が消えゆく事実を伝えるのにも便利だと思う。
どんな冬虫夏草でも永遠に出続けるなんて事は無いんだし、冬虫夏草が消えゆくことも楽しく考えられそうじゃないだろうか。そうですね。それは言い過ぎました。
スポンサーサイト
2018/09/08

同定はとても難しい。

ウスキタンポセミタケという冬虫夏草がある。名前の通りセミに発生する冬虫夏草で、色はレモンイエローでとても美しい。
こんな感じ。

美しいのは良いんだけど本種は掘り取りが結構難しい。ウスキタンポセミタケの基部を見てもらいたいが、糸のような柄の太さである。
これがこんな感じで埋まっていて、さらに粘土質のだったりすると最悪。

ところで同じウスキタンポセミタケでもこんな個体も存在する。
柄の太さが全然違う。ただ両者は宿主のセミの幼虫が別種で、この個体の方が大きい。ということは栄養条件が全然違うという前提がある。とはいえ、その場合は普通に考えれば結実部が大きくなる、あるいは数を多くして胞子の量を多くするのではないだろうか。

今度は結実部を比較してみる。
子嚢殻の突出具合が細い方の方が顕著に見える。子嚢果の成長具合の差かと思って顕微鏡観察するも胞子の大きさはほぼ同じ、子嚢殻の大きさは細い方の方が大きく感じられた。(両個体とも胞子、子嚢殻ともに十数個平均)
柄が細い方。

柄が太い方。

今回の話は両者が別種だろうという話をしたいわけではない。ただこういう状況になってつくづく思うのは、こうした「同じなんだろうけどどうだろう?」という状況になった場合にどういう基準で差があると判断すれば良いのかが今になってもよく分からないということだ。分子系統解析という話もあると思うが、形態観察は最低限のやらなければならないと思う。
同定作業をするときにこのような場合が一番辛い。本日顕微鏡を覗きながらそう思ったので記事にしてみた。
2018/08/05

オサムシタケとオサムシタンポタケ

広告が出るどころの騒ぎではなく更新が滞っておりました。やる事が多い上に子供まで産まれりゃ時間は無くなります。フィールドは行きますけどね笑
ともかく今回の話題ですがオサムシタンポタケとオサムシタケについてです。
皆さんは初めて見てこの二つの違いを聞かれれば間違い探しに感じると思う。それもそのはず、この二つは種類としては同種でアナモルフとテレオモルフの関係にあるのだ。簡単に言うと違いは以下の通り。
テレオモルフ:有性生殖を持つ生殖形態。胞子の生産効率は悪いが、親とは違った遺伝的個体が生まれる。環境が劇的に変わった時に突然変異で生き残れる要素がある。オサムシタンポタケ。
アナモルフ:有性生殖を持たない生殖形態。親のクローンが増えていく。胞子の生産が単純。オサムシタケ。
オサムシタンポタケ

オサムシタケ

間違い探しの答えはオサムシタンポタケには先端にゴツゴツしたものがあること。この部分にはたくさんの子嚢胞子という胞子が詰まっている。

オサムシタケに比べてオサムシタンポタケは圧倒的に発見頻度が低い。長年憧れていた種類で、発見報告を見ると「大量にオサムシタケが発生している場所にオサムシタンポタケが少数混じる。」ということなのでそう言う場所を探しても全く出ない。
というわけでツイッターに発見報告があったので案内してもらうと、なんの特徴もない水田裏の里山林。というより湿度もあまり高くなく冬虫夏草をあまり探しに行かないような環境だったのだ。しかし探してみると確かにある!ただ、オサムシタケもオサムシタンポタケもあまり多くない。合わせて10個体程度だったと思う。比率的には4:6くらい。比率的には今までの報告からすると圧倒的に多い。これには驚いた。
予想の範疇は出ないが、本来のオサムシタケとオサムシタンポタケは今回のような里山林なんじゃないだろうか。
僕が知っているオサムシタケが大量に出る場所はもっと湿度が高く、茹だるような環境だった。じゃあ、なぜオサムシタケが大量に出るのか。おそらくアナモルフ全般に言える環境適応能力の高さにあるのではないかと思う。例えばハナサナギタケやコナサナギタケは代表的な冬虫夏草のアナモルフだが、あらゆる場所に発生する。
極端な話僕が冬虫夏草を探すようになってから庭にハナサナギタケが出るようになっている。生物コンプライアンス(新しい)的にはどうかと思う。ごめんなさい。
話はそれたが、こうして(?)移動したオサムシタケかオサムシタンポタケがオサムシ大量発生地にたどり着いてガンガン寄生して繁栄したものの、テレオモルフを発生させるにはイマイチ環境が合わない。なのでアナモルフのオサムシタケが大量に出る、、、。ということなのでは。オサムシタケも地域によって宿主は同じオサムシでも種類が違うというのもここにあるのでは。と言うことを先週くらいに誰かと夢で話した。たしか相手も同意していたはずだけど、まさかあの相手はオサムシタンポタケだったのでは。
まだまだ穴が多い理論だけど、こういった視点でフィールドを見ると面白い。妄想は自由ですしね。
2018/06/07

生育条件の差

最近僕の中でヌンチャククモタケがホットな話題になっている。興味があればツイッターで騒いでいるので見て欲しい。
ところで僕は今までかなりのパターンでヌンチャククモタケを追培養しているが、それを並べるとこんな感じ。おそらく最高の生育条件だろうと思う。




一方でこれが先日野外で採取した成熟個体。

写真だと少し分かりづらいが、子嚢果の数が多いだけでなく、一つ一つの大きさが明らかに追培養した個体の方が大きい。追培養の方も採取個体もしっかり胞子が確認できる状態でヌンチャク型であった。クモの大きさも同じくらいで栄養条件もさほどさは無い様に思う。
つまりトルビエラ型の子嚢果の大きさは条件によってかなり変動があって、同定の基準としては注意を要するんじゃないかと思っている。まぁ、ヌンチャククモタケと思しき種類が細分化される線もあると思うんで、確信は持てないけど。
ここからは完全に妄想だけど、トルビエラ型の冬虫夏草は柄のある冬虫夏草が柄を欠いたもので、条件が良くなると本来結実部が大きくなる代わりに子嚢果の数とそれ自体が大きくなる、、、とか考えるとロマンチック。学術的な根拠は何も無い笑。けどこんなこと考えてる時間が一番楽しい。
2018/04/24

冬虫夏草との親和性

冬虫夏草を探していると、付随して沢山の生物が見えてくる。粘菌もその一つだ。思うにその理由はゆっくりと小さいものを探す視点が共通しており、目に入りやすい部分が大きいのだと思う。ただ、粘菌の探索に必須な知識だと思われる植生や温度湿度等の条件については、偶然に任せていると言える。
冬虫夏草でいえば別の生物屋が見つける種類はド珍品が多く、決して侮れない。環境条件の視点に固定概念が無いから、冬虫夏草屋が見つからないものが見つかるのだ。そう考えると、非常に美しい粘菌との一期一会を写真に収めておきたいと思うようになるのだ。

しかし美しい。どうして焼けた鉄のような色が出るようになるんだろうか。種類については詳しくないが、拡大すると更にハッと思わされる。これからも観察を続けたい。